お前は、俺のもの。
「私は昔から人に自分の気持ちを伝えることが下手で…男性と付き合っても、いつも「つまらない、楽しくない」と言われてフラれていました。相手の顔色ばかり窺っていました。だから…一ノ瀬課長と一緒にいても、正直に言えば怖かったんです。一ノ瀬課長を怒らせたら、自分もあの時のように、怒鳴られると思ったので…」
ああ。やっぱり、あの電話を聞いていたのか。
「よく二年も前のことを覚えていたな。あの電話は親父で、突然「千堂設備の令嬢と結婚しろ」と言い出したから、勝手に決められたことに対して怒鳴ったんだ。もうその必要も無くなったから、今は関係ない」
「やっぱり、それが原因で川添さんと別れたんですね」
と、「なるほど」とばかりに頷く凪に、俺は笑った。
「まあ、表面上はそうなっているけどな」
「違うんですか?」
と、目を丸くする凪。
原因の当人を前にして、少し笑った。
──お前を好きになったから川添と別れた、と言ったら、どんな顔をする?
「そのうち教えてやるよ。今はお前に飢えている」
俺は再び、凪へ顔を寄せた。
「やっぱり、キスをくれ」
柔らかな手に、自分の手を重ねて指を絡ませる。
──俺だけの、凪。
俺は凪の唇を、ぽってりと熟れるまで愛した。