お前は、俺のもの。
鬼の本気
「ん。小学生レベルのオムライスだ」
私の作ったオムライスを、温めて食べる鬼。
私はムッとして、
「食べたくなければ、残していいですよ。明日にでも私が食べますから」
と言った。
不味いと言われたわけでないのに、三十歳の女が小学生レベルのオムライスしか作れない惨めさに凹んでしまう。
鬼から開放されたのは、つい三十分ほど前のことだ。彼はシャワーの後、オムライスを食べると言い出した。
「凪は食べたんだろ?じゃあ、俺も食う」
と、鬼はスプーン片手に電子レンジが「チーン」と鳴るのを待つ。
私は唇が少しヒリヒリするのを我慢して、鬼と一緒にダイニングテーブルの席で冷たい麦茶をいただいた。
「唇、赤くて可愛い」
「一ノ瀬課長が、噛みすぎなんですよ」
「まだ舌を入れてないだけ、ガマンしろよ」
「唇がヒリヒリしてます」
そんな言い合いをしていると、鬼が「凪」と呼んで私の後頭部に手を添えた。
「んっ」
再び遠慮のないキスが落ちてきて、「チュッ」と小さなリップ音で離れていく。
「敬語のペナルティ」
と、鬼は面白そうに笑みを浮かべた。