お前は、俺のもの。

このガラス工房「くすのき」の二代目社長であり、職人の楠さんは、箱の中身が見えなくて拗ねている私を見て人懐っこそうに軽く笑う。

「お姉さんは、一ノ瀬さんの彼女?」
と、ダイレクトに聞いてきた。
返答に困っていると、私の肩に鬼課長の手が乗る。
「はい、俺の彼女です。先日やっと手に入れたばかりなんです。仕事中は部下ですが、どうしても甘やかしてしまいます」
と、鬼が営業スマイルを浮かべる。
楠さんは「はははっ」と声を出して明るく笑う。
「そうかー。前に来た時に「手に入れたい女」と言っていた、お姉さんがそうなんだ。可愛くて優しそうな人じゃない?」
と、頷いている。
私は慌てて頭を下げた。
「は、はじめまして。一ノ瀬リビングの満島と申します」

楠さんは「あれ?」と首を捻る。
「お姉さんも満島さん、ていうの?この前聞いた声と違うから、もう一人「満島さん」がいるのか」

私はどう説明していいのかわからず、鬼課長を見上げると、彼もまた、眉をひそめて困惑していた。
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