お前は、俺のもの。
この道路沿いにコンビニの看板が見えた。
「あ、コンビニがあります。コーヒーを買ってきますから車を停めてください」
私は強調するように声を出した。
鬼課長は特に言い返すこともなく、大人しくコンビニの駐車場に入っていく。そして、集中力が切れたかのようにシートベルトを外すと、「はぁ」と息をしてシートに凭れて目を閉じた。疲れないわけがない。
「コーヒーの他に欲しいものはありますか」
私は財布を持ってシートベルトを外す。
右腕をそっと掴んできた大きな手に気づく。鬼課長の目は薄く開いて私を見ていた。
「…凪が、欲しい」
そう言って、再び目を閉じた。
──少しでも、長く休ませてあげたい。
そう思って、私は車から雨風の外へ飛び出した。