お前は、俺のもの。

河野くんはかなり頑固なのか、それでも納得してない困惑した表情をしている。
視線を戻した加瀬部長が言った。
「河野、しばらく営業の内勤をお前に任せる。これを機に営業事務を覚えるといいだろう。カフェの担当を一ノ瀬課長に引き継いでくれ。内勤期間はカフェの引渡しまでだ。いいな?」

「そんなっ」
河野くんは途端に焦りだした。
「カフェの契約は俺が取ってきたんですよ。どうして営業でない一ノ瀬課長が…」
と、彼の反論に加瀬部長がズンッと顔の距離を狭めてきた。

「こんなこと大声では言えないが、お前が喫茶店で仕事をサボって涼んている間、内装工事の段取りや不足材料の発注をして何度も暑い中現場へ通ったのは一ノ瀬課長だ。お前は影で支えてもらっていたんだよ」
「…くっ」

多分、この小声の内容が聞こえていたのは、すぐ近くにいた一ノ瀬課長と私くらいだろう。
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