お前は、俺のもの。

私は拒否をしない。息ができなくても、受け入れる。
これが、彼の怒りなら。
全身の力が抜けて、もう呼吸が、と思う頃にゆっくりと体が開放される。鬼課長の腕に凭れて大きく息を吸い込んだ時、苦しくなってむせて「ゲホッ、ゲホッ」と咳が出た。

「息ができてなかったのか。大丈夫か」
彼は優しく背中を撫でて、再び私を抱き寄せる。

「ごめん。凪があんまり可愛いことを言うから、自制心を抑えるのに苦労した」

そう言って、私の頬に軽く唇を落としてくれる。
呼吸が落ち着いて、やっと「大丈夫」が言えた。
これで車の大破が免れるのなら安いものだ、と思うことができた。同時に自分を頼ってくれた鬼課長が愛しくてたまらない。

鬼課長に、髪を撫でられ、その仕草に彼自身も落ち着いてきたように見える。
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