お前は、俺のもの。
鬼と私
長野へ行った二日後、鬼課長と私は朝早くからモデルルームのマンションの前に立っていた。
この時点まで、私は彼からキツくモデルルームの入室を禁止されていたため、室内にどんな変化が起こっているのか知らないのだ。図面上の配置はわかっていても、リアルでは全く違うはずだ。
早く室内が見たくてウズウズしている私を余所に、鬼課長は落ち着いた面持ちでモデルルームの完成を迎えていた。昨日は加瀬部長も最終チェックのため同行して室内を見ているはずだ。しかし、あの加瀬部長だ。事務所に戻ってきても特に何か言われることもなく、一日が終わってしまった。もちろん、鬼課長も「楽しみにしてろ」と言うだけで、室内の写真さえ見せてくれなかった。
だから今日は起床した直後から楽しみで仕方がないのだ。モデルルームの見学会は今日と明日の二日間、時間はそれぞれ午前、午後、夕方の三回だ。
鬼課長は見学会に参加するお客様のパンフレットの確認とスリッパなどの用意のために、モデルルームのある五階へ向かった。
私はマンションの玄関口でお客様の出迎えと車の誘導のために残る。
──お客様をモデルルームへお連れすれば、私も室内が見れる!
緊張とワクワクで落ち着かない。
そのとき。
私のスマホに、鬼課長から着信があった。