お前は、俺のもの。
「笹島主任が車で現地まで行って、満島と交代して運転して会社に戻ったらいいのに、と梛くんに言ったんだけどね。彼は「落ち込んでいる時に運転はさせられないから頼みたい」と言ったんだよ。本当に満島は愛されているね」
車を走らせた斉木課長がクスッと笑って鬼課長との会話を教えてくれる。
社内の一部で公になってしまった、鬼課長と私の関係。斉木課長は「やっと収まるところに収まった、という感じだね」と、私たちのことを喜んでくれたのは昨日のことだ。
車の中ではあるが、斉木課長と二人になったのは、ある意味ラッキーかもしれない。それは役職者としての彼から、聞きたいことがあったからだ。しかし内容によって、教えてくれないかもしれない。
「斉木課長」
「うん?」
彼はしなやかなハンドル操作で返事をした。
「教えて欲しいことがあります。…彼らは、どうなったんですか」
彼は口を閉じて運転を続ける。
──やはり、教えてくれないのだろうか。
昨日の夕方、早速、商品の無断キャンセルの件で、事情を知るらしき彼らは、上層部とコンプライアンスの査問委員会に呼ばれた。そこに当事者である鬼課長も出席して、遅い時間まで行われていたらしい。
鬼課長の部屋のリビングで彼の帰りを待っていたが、十二時を過ぎたあたりで意識が途絶えてしまっている。
気がついたら朝で、鬼課長は既に朝食の準備をしていた。査問委員会のことを聞いてみたが、
「すぐにわかることになるが、今は凪のことだけ考えていたい」
と、はぐらかされてしまった。