お前は、俺のもの。

車は一ノ瀬リビングの社用車駐車場に止まる。
エンジンを止めた斉木課長は「満島」と呼んだ。

「本当は一番の被害者である君が、全てを知っておくべきだと思う。けど、梛くんはお父さんである社長に言ったんだ」


『彼らを社内規則に従って罰するというなら、それでもいい。だが、俺の大切な女性に危害を与えトラブルに巻き込んだことは、俺にとって彼らは重罪に値する。

俺が彼らを半殺しにして犯罪者になる前に、俺の納得する罰を望む』


「まあ、親子だからね。梛くんが100パーセント本気だということは社長も理解したようだ。だから今朝…彼らに辞令が下りたよ」
「……!」

私は、慌てて車から飛び出して走る。

ビルの一階のセキュリティゲートを通り、エレベーターホールの奥にある社員用掲示板を目指す。
始業時刻は過ぎているのに、そこだけが社員たちの塊ができていた。近づくと、女性たちのすすり泣く声や、悲しみの表情を浮かべる顔が見える。男性たちの驚きの声や、落胆する顔が見える。

私は掲示板へ視線を移そうとした。視界がスッと、ダークグレーのスーツに遮られる。

「…本当に、見るの?」
斉木課長の心配そうな声を聞く。

──彼らの結末が鬼課長の納得したものなら、私も受け入れないといけない。

私は頷く。
「大丈夫。ちゃんと見るよ」
見上げた私に、彼の少し悲しそうな顔が横へと動いた。
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