お前は、俺のもの。

──違う。これは、私の望んだ結末じゃない。

どこで間違ったのだろう。
私が由奈に仕事を振り分けたことがいけなかったのか。
鬼課長の助手をしたことがいけなかったのか。
鬼課長と食事をしたことがいけなかったのか。
鬼課長とレセプションパーティーに行ったことがいけなかったのか。

鬼課長を愛したことがいけなかったのか。


「斉木課長」
彼を見上げる。
「満島?」
私は余程酷い顔をしているのだろう、彼の顔が驚いている。

「わ、私は…彼女たちの、こんな処分を望んでいません。だって単純に川添さんは鬼課長が好きで、市村係長は川添さんが好きで。小堺さんは鬼課長が大好きで、由奈ちゃんはSNSの炎上を恐れていたってことですよね?」

「お、鬼課長って……。ま、まぁ、私情だけみればそうだけど」
「みんなはその私情を仕事に八つ当たりした、と思えば…何もこんな重い処分を…」
困った顔をする斉木課長に、私は納得出来ずに唇を噛む。

「満島」
と、斉木課長は私の肩に手を置く。
「君はわかっているはずだ。社会人として会社で働く以上、私情で会社に傷をつけちゃいけないことくらい」
「わかってます、わかってます!でも…」
受け入れられず首を横に振る私に、斉木課長は眉を八の字にして弱々しく微笑む。

「本当に君のお人好しな性格にはビックリするけど、でもそれ以上に、梛くんは君を彼らから守ろうと必死だった。自分の父を半ば脅してまで君に近づき、君が毎日笑っていられるようにするために」
「鬼課長には本当に感謝しています。毎日私のことを考えてくれて甘やかしてくれる。でも、そのために川添さんたちにあんな処分が下るのは間違っている!」

この会社の、ただの事務員一人のために、こんな大袈裟なことが起こるなんて。
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