お前は、俺のもの。

通話が終わろうとする頃、
「あ、それから」
と、由奈が繋ぐ。

「るみから伝言を預かっています。「退職することにしました。一ノ瀬課長は諦めます。安心してください」と言ってました。るみは一ノ瀬課長が好きだったから、私も彼女を応援していました。でも凪さんと一ノ瀬課長が一緒にいる姿は、不思議と自然な感じがしました」




朝日の注ぐ、モデルルームのリビングをゆっくりと歩く。
昨日は見ることの出来なかったイノベーションの完成したお部屋を、この日改めて見渡す。 そこから見えたダイニングテーブルの照明に、私は息を飲んだ。

白い磨りガラスに小さな四葉のクローバーが舞っている、ペンダントライト。食卓に幸せを運んでくれるような、あたたかな灯りを広げてくれる雰囲気がステキだ。
ダイニングテーブルに二つ並んだその照明が、いつか夢見たものを目の前にして胸がいっぱいになる。
「……っ」
嬉しくて、泣いてしまいそうだ。

鬼課長は私の肩を、そっと抱き寄せる。
「これは「凪のペンダントライト」だ。見学のみなさんに、お前の自慢のライトを見てもらうといい。寝室にもある。おいで」
と、彼に手を引かれて寝室に向かう。

寝室は鬼課長のデザインが生きた空間が広がっていた。落ち着いたブラウン系の家具が、大人の雰囲気を引き立たせる。
イタリア製の収納棚もシンプルな感じで、部屋の中で全く浮いた感じがないのも成功だったと思う。

ダークブラウンのベッドの脇にあるサイドテーブルに視線がいく。
「…あ」
白い磨りガラスに大きく縁どられた四葉のクローバーが描かれたライトスタンドが、柔らかな灯りを浮かばせている。

「…かっ、かわいいっ!」
思わず近づいて見入ってしまう。
四葉のクローバーが大きく二つ、線で描いただけのライトカバーだが、センスがいいのだろう、シンプルなのに存在感がしっかりとある。

「気に入ったか」
私の様子を見ながら話す鬼課長の言葉に、気持ちがいっぱいいっぱいで、私はただ言葉を詰まらせて首を縦に振るだけだった。
< 271 / 285 >

この作品をシェア

pagetop