お前は、俺のもの。

午前と午後の見学会が終わり、今は最後である夕方の見学会に参加された二組のお客様が、各部屋を見ている。
藤川様と桐谷様、どちらも若いご夫婦で藤川様の奥様はお腹が大きかった。アンケートを見ると、どうやらご主人様同士が同じ会社にお勤めのようだ。そして奥様同士も仲が良いように見えた。

藤川様はご夫婦で子ども部屋を見ていて、鬼課長から内装について会話をしている。
桐谷様も二人一緒にキッチンやダイニング、リビングのインテリアを見て仲良さそうに話をしていた。
もちろん、ダイニングのペンダントライトを見て「このライトは素敵だね」と、好評だ。

──桐谷?どこかで聞いたよね?

「そういえば。じいさんが、部屋に合うダイニングセットを作ってくれるそうだ」
と、ご主人様が奥様に話す。

──桐谷…じいさん……。

「…あっ!」
思い出したと同時に声が出てしまった。慌てて口を押さえたが、しっかりと桐谷夫妻にも聞こえたようだ。
二人が不思議そうに私を見るので、何か話題を振ろうと思い出したことを話してみた。

「あの…桐谷様のおじい様は、もしかして遊園地の隣のアウトレットモールにお店を…」
「そうですけど…。祖父を知ってるんですか?」
と、ご主人様からすぐに返事がある。

「もしかして、今月ご結婚されることに…?」
「はい。書類上いろいろあって、入籍は先月したんです」
と、鬼課長とは少しタイプの違うカッコイイ旦那様は、恥ずかしそうに微笑む優しそうな奥様と見つめあった。
< 272 / 285 >

この作品をシェア

pagetop