お前は、俺のもの。
番外編 凪を追う者
「もう、どうしてあなたは、そんな男に育っちゃったのかしらっ!」
もはや憤りを通り越し、呆れるその顔は疲れている。
一ノ瀬幸子、四十六歳。
ただいま、三男の息子に目くじらを立てているところだ。
最近、この三男の女遊びの激しさに頭を悩ませるようになった。
それは先月のことだ。仕事帰りに街で三男の梛が女の子と一緒にいるところを見かけるようになった。まあ、あの子も十八歳の大学生、女の子と一緒に歩くくらい当たり前だと思っていた。
しかし見かける度に、連れている女の子が違う。
──女の子の友達が多いのかしら?
その日、仕事から帰ると、二階からぼんやりとした様子で階段を降りてくる女の子と出会う。
「こんにちは。梛のお友達?」
と声をかけると、彼女は驚いて顔を上げた。
化粧が崩れて口紅もとれた酷い顔をしている。
「すみません…」
と、ポツリというと、慌てて玄関のドアを開けて出ていった。
そして翌日。
仕事から帰ると、家中に女性の叫び声が響き渡った。いや、叫び声というより、あの艶かしい営みの声に近い。
「もっと、もっとー!」
と大胆な甲高い声に、疲れている上にそんな声を聞かされては、たまったものではない。
動揺以上に苛立ちが勝った母は、その色っぽい声が消し飛ぶくらいの大声を張り上げた。
「梛!その女を黙らせろっ!!」