お前は、俺のもの。

そんなことをぼんやり思っている時に、綾乃に声を潜めて呼ばれた。
「ね、凪さん。見て」

「スゴい組み合わせの三人ですよ」
と、彼女はスプーンを握ってじっと食券販売機のほうを見ていた。
そっと振り返る。
「……」
そこには市村係長が自分のトレイと、後ろに立つ秘書課の川添穂香(かわぞえほのか)にもトレイを渡している。川添穂香の後ろに、口をへの字に曲げた鬼課長の姿。

両手にイケメン二人を携えた、専務の美人秘書のゴージャスな画に、社食のみんなの視線が三人に集まっている。確かに、この三人が一緒にいるのは珍しいかもしれない。
彼らは空いている四人テーブルに座って、楽しげに食事を始めた。自分たちが注目されていることに気づいていないようだった。

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