お前は、俺のもの。

まるで私の保護者のように会話をする鬼課長に呆然としていると、
「ほら」
と、スマホを返された。

私はスマホの時刻を見て、鬼課長の約束を思い出した。
「一ノ瀬課長、川添さんの約束は大丈夫なんですか」
と、彼の顔を覗き込むように見上げた。

ぽん、と大きな手が私の頭を撫でる。
「もうすぐ電車が来る。気をつけて帰れ」
鬼課長はそう言って、私を改札まで歩かせた。

改札を通り、振り返る。
もう、彼の姿はなかった。

この時から自分の周りで色々な事が変わっていくなんて、知る由もなかった。


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