お前は、俺のもの。
昨日の由奈の仕事だった「はず」の見積書は、綾乃が作成していた。その時、綾乃は確かに「計算が違っている」と文句を言い、正確な数字を入力していた。
そこに「こっそり直しておいた」という事実はなく、逆に綾乃に「この人、算数苦手でしょ」とまで推測されてしまっている。
それを鬼はさも自分が直したような言い回しをするあたり、チラチラと腹黒さが見え隠れした。
鬼課長の真意は見えない。
だけど彼が現れたことで風向きが変わったことに、私は小さく胸を撫で下ろした。
午前中、鬼課長は工事完了間近のカフェのオーナーに呼ばれて、あのあとすぐに外出した。
私は彼の言い残していった課題をやろうと、一時間ほど前からデスクに図面を広げてそこに記された商品名や品番、仕様書の確認をして一つずつカタログを広げていく。
何しろ使用される商品が多い。予定外に進んでいないことに気づき、そしてお昼休憩の時間も十分ほど過ぎていた。
綾乃もいないし、コンビニでおにぎりでも買おうと会社を出た。