お前は、俺のもの。

「なるほど。さすが心の中をなかなか見せない、一ノ瀬課長らしいデザインだね」


意味深なセリフに、私は思わず「え?」と彼を見つめた。
中性的で端整な顔の市村係長はニッコリと笑う。
「落ち着きのあるシンプルな内装、少しだけ拘りを入れた家具、内装と同調を避けても決して空間の邪魔をしないインテリア雑貨。「こんな部屋に住んでみたい」と誰もが思う部屋づくりに関しては彼は一流だと思う。でもね…」

じっと見ていないとわからないだろう、彼の僅かな表情の変化。

「僕には「自分の本当の欲」を必死に隠してるように思う」

その図面を見る市村係長の横顔は、息を飲むほど綺麗なのに、その瞳が何故か怖く感じた。
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