お前は、俺のもの。
デスクの内線電話が鳴り出した。
「はい。満島です」
相手は一階ショールーム受付の女性社員からだった。
『お疲れ様です。一ノ瀬課長はお見えですか。受付に千堂様がいらしています』
「千堂」と聞いて、先日鬼課長と一緒にいた千堂設備機器のご令嬢を思い出す。
市村係長が去って眉間のシワが二本消えたというのに、鬼課長にその旨を伝えると、再びそのシワが二本現れ深く刻まれた。
触らぬ神に祟りなしとばかりにコソコソと逃げようとした私は、
「丁度いい。お前も来い」
と、敢え無く連行されてしまった。
「お久しぶりですわね。最近は会っていただけなくて寂しかったんですの」
一階待ち合いスペースのソファに座っていた彼女は、鬼課長の課長を見るなり顔を綻ばせて頬をピンクに染め上げる。
常に手入れをしていると思われる腰まで伸びたストレートの黒髪の毛先を、指でクルクルと弄んでいた。
「お久しぶりです。最近は新しい現場が始まったので休日返上で仕事をしています」
鬼課長はそう言いながら、彼女の向かいのソファに座る。
鬼課長が、笑っている。
私の背中をゾクリと震わせる微笑みだった。
その彼の微笑みをなんの疑いもなく、ニコニコと受け止める美女。