お前は、俺のもの。
──なるほど。彼女に早く帰ってもらうために、私をダシに使ったのか。
一瞬、ほんの一瞬だけ、鬼をジトッと睨んでみた。
千堂紗羅は上目遣いに鬼を見つめる。
「ご一緒にお茶する時間も作れないんですの?あなただって、いくらお仕事でもそんな地味な人の冴えない顔を見ながら話すより、私と少しだけ息抜きする方が楽しいに決まってるでしょ?」
──なんか、チクチクとツッコミを入れたくなる言い方だな…。
なんとか無表情を心がけながら、心の中では千堂紗羅の顔をグーパンチしようとしていた。
そして彼女が噂通り、ある意味「気難しい人」と言われるのも理解できるような気もした。
「せっかくここまで来たんですもの。お茶くらいしましょうよ」
と、一度もショールームの商品を見ようとせず、鬼課長の漂わす空気さえも跳ね除けて自分のペースに持っていこうとしている。
──これがお嬢様の気質、なんだろうか。
しかし、鬼も負けていなかった。