死者の時間〜最期のメッセージ〜
「藍!!」

如月刑事の声に藍は目を開ける。目の前にあるのは、鉄格子でも骨になった青磁でもない。暗いホテルの部屋と如月刑事の心配げな顔だ。

「随分うなされていたから起こしてしまった。大丈夫か?」

如月刑事が藍の頰に触れる。その時初めて藍は自分の瞳から涙がこぼれ落ちていることに気づいた。まだ体は震えている。

「起こしてしまってごめんなさい。まだ夜中なのに……」

藍が時計を見ると、日付けが変わって数分も経っていなかった。藍は慌てて謝る。

「私のことは気にせず寝てちょうだい」

「いや、お前が落ち着くまでそばにいさせてくれ」

如月刑事は藍の手を取り、離さない。藍は諦めることにした。

「青磁さんの夢か?」

藍の目を如月刑事は見つめる。藍はゆっくりと頷いた。如月刑事に嘘をつくことは、なぜか付き合っていた頃からできないのだ。

「お兄ちゃんが……お兄ちゃんが……」

藍は見た夢を思い出し、また藍は泣いてしまう。その背中を如月刑事は優しく撫でた。

「大丈夫、大丈夫だ」
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