死者の時間〜最期のメッセージ〜
如月刑事に背中をさすられることで、藍の心は少しずつ落ち着いていった。涙を拭い、大きく息を吐く。

「本当に、ごめんなさい。起こしてしまって……」

「俺は大丈夫だ。藍、お前は夢を見るほどずっと待っているんだな」

如月刑事に言われ、藍は頷く。そして言った。

「ええ。私は、お兄ちゃんを待ち続けると決めているの。私に夢を与えてくれた人だから、何があっても約束を守りたいの」

真剣な目をする藍を、如月刑事は微笑んで見つめる。そして手をつないだまま、二人は気がつけばまた夢の世界へと落ちていった。

藍は、もう悪夢を見ることはなく深い眠りに落ちていた。

朝になり、一緒にベッドで眠ってしまったと二人が気付いて驚くのは少し先の話。



藍と如月刑事は着替えを済ませ、昨日のうちにコンビニで買っておいたパンを朝ご飯に食べてホテルを出る。

「藍、勘違いをされそうだからホテルに泊まったことは内緒にしよう」

如月刑事が顔を真っ赤にしながら言う。藍も「ええ、そうね」と大きく賛成した。
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