死者の時間〜最期のメッセージ〜

藍が訊ねると、大河はそっと藍の手に触れる。優しくまるでガラスの商品を扱うようにそっと触れた。

「えっと、これは……」

驚く藍に、大河は「ハグや人に触れてもらうことは副交感神経が働いてリラックスするそうです。そのため、ストレスも軽減されるそうですよ」と幸せそうに微笑んだ。

藍は、あの夜のことを思い出す。だからあの時落ち着くことができたのだ。

「大河、やるじゃん！」

朝子がニヤニヤしながら大河を突く。聖も朝子と同じようにニヤついている。

「霧島さん、ちょっといいですか？」

所長室のドアが開き、正人が藍を呼ぶ。

「はい、何ですか？」

「実は、霧島さんに裁判で証言してほしいと頼まれまして……」

「わかりました」

今日も法医学研究所は忙しい。藍は窓の外に広がる青空を見つめた後、仕事に取り掛かった。