希望の華
零
「神楽ぁ!」
今日も怒鳴られた。
怒鳴っているのは私の叔父。
“神楽”呼びということは稽古でやらかしたということ。
「なんでしょうか、琥珀様。」
「お前はまた、茶室にこもって!
たまには道場に顔を出したらどうだ!」
私は手元の点て途中の抹茶に入った茶筅をまた振り始めた。
「出してますよ、毎朝。」
「俺が言いたいのはそういうことではない!
お前はいつも柔術を避けてばかりで!」
私は言葉を返さずに点ったばかりのお茶碗を回して出した。
「お茶が点ちましたよ。」
「っ...ああ。」
琥珀こと、叔父様は客の席について抹茶を飲んだ。
「有栖〜、私のピンクの帯どうしたっけ?」
茶室にまた一人来客。
今度は私の母様。
「牡丹のものならタンスの下から二番目の右側。」
「わかった、ありがとう〜」
彼女はまだ着途中の着物で戻っていった。
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