希望の華
私は叔父様の横を通って自分の部屋の方へ歩いていく。
「有栖様。」
途中、お手伝いさんの中田さんに声をかけられた。
「お便り、今日も届いていますよ。」
「ありがとう。」
私は彼女に差し出された五、六枚の封筒を受け取り眺めた。
「相変わらず人気でらっしゃいますのね。
忍としての身体能力に加えて頭脳明晰、眉目秀麗...才色兼備とは有栖様のためのような言葉ですわね。」
「お世辞はやめてちょうだい。
私は着替えて稽古出るから。そうしなきゃ叔父様に怒られてしまうし。」
私は彼女との会話をやめて自分の部屋に入った。
私は押し入れから出した道着に着替えて中庭の倉庫に向かった。
私はその中で自分用の忍の道具一式を入れたナップザックを背負い、竹刀を手に取る。
私は倉庫を出て剣道場に足を向けた。
「あっ!」
道中、そんな声で顔を上げると棚の上に置かれたものを取ろうとしている母様を見かけた。
母様が取ろうとした箱のある棚がこちらへ倒れそうになっていた。
「母様っ!」
私は走って母様を押し出した。
すると1秒もせずに私の上に本棚が落ちてくる。
頭と首に強い衝撃がかかり、意識が朦朧とする。
「有栖!有栖っ!
誰か、有栖が...!」
消えゆく意識の中、お母様のそんな声が聞こえた。
気付けば意識を手放していた。