星の数より多く、君に愛を伝えたい。
太一side
どうしても、俺からは言えなかった。
これ以上、俺の口から望月の家庭事情のことが出てこなかった。
理由を言わないままでいたことで、少し教師からは小言を言われたもんだけどまあ仕方ない。
俺は怒られないことを望んでいたわけじゃないんだからな。
だから、和田から望月のことを言われ、俺がどうしてそんなに怒ったのか聞かれた。
怒るに決まってるだろうが。
勝手に人を捨て子だと決めつけた、向こうが悪いんだからな。
だから俺は、望月の家庭事情をこれ以上大きな話題にしたくなかった。
特に和田みたいなやつが聞こえるようなところではな。
こういう奴に望月の家庭について本当のことを知っていると言って、全部教えたら今度はもっと大きな話題にしたがるだろうから。
教師から軽い説教をされた俺と和田は、職員室を出てそのまま帰ろうとした。
「松岡くんっ!」
黒くて長い髪を揺らして、小走りで向かってきたのは望月だった。
「庇ってくれてありがとう……」
黒目がちなその瞳は、切なそうにしていつつも俺から離さない。
「いーや、俺のせいだし」
「ううん。松岡くんがいてくれたから、噂が大変だったけど前より素直になれたって思うよ……」
どこまでも優しい奴なんだよな、望月は。
こんなに優しい上に、ぬれたような瞳は時々泣きそうになっているようなもんだから……俺は、放っておけないんだよ。