星の数より多く、君に愛を伝えたい。

ウソだろ?



“だって太一くんがいたんだもん”

“あんなに優しい男の子、はじめて見た。”

“太一くんは、まるでヒーローみたいな人だった。”


“きっと太一くんっていうヒーローのような子といられたっていうのは、恋人がほしかったわたしへの、せめてもの贈り物だと思っているの。“


星歌は……俺のことを本当にそんなふうに思っていたのか?


ただ、自分の母親に宛てて書いた手紙にそういう文がある。
本心であることが確認できる。


ここは男として、優しく微笑むべきだと思ったが俺の顔に絶望が広がっているのが自分でもわかった。


星歌がそう言うなら……
俺は言えばよかった。


“星歌のことが好き”って。


たった一言の言葉なのに。
口を開けば、何度でも言える言葉なのに。


俺は、言わなかった。
言うチャンスを逃した。


もう、「星歌のことが好き」と言うチャンスは永遠に戻ってこない。


俺はその日、中1の頃の校外学習の写真に写っている星歌を見て、夜中もずっと泣いた。




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