星の数より多く、君に愛を伝えたい。
松岡先輩は、重そうな口を開いた。
「俺が望月の家庭環境を最初に聞いちまったんだよ。そしたら、それをたまたま他のやつに聞かれたようで、そのバカは望月を捨て子だとウソを広めたんだ」
「そう、だったんですか……」
望月先輩の家庭環境は、わたしはさっぱり分からないけれど、少なくとも松岡先輩のせいじゃないことはわかった。
「でもそれは……松岡先輩のせいじゃない、ですよ……」
わたしがそう言うと、紺色の空を走る夜風がわたしの頬や髪の毛を通り過ぎた。
「きっと……望月先輩だって……松岡先輩のせいなんて……思ってないですよ……」
わたしのぬれた両目から、涙が出て地面にボタッと落ちた。
灰色だったコンクリートは、わたしの涙が落ちたそこだけ、黒っぽくなる。
「関口。振った俺のこと、どんなに恨んでもいい。ただ……望月の噂は絶対に信じないでほしいんだ。そうしてくれるか?」
松岡先輩って、どこまでバカなんだろうってわたしは思った。
どうしてそんなに優しいの?
わたしは、その優しさを恨むよ。
「はい、信じません」
「ありがとう、関口」
わたしは最後に、松岡先輩の微笑んだ目と涙でぬれた自分の目を合わせた。