星の数より多く、君に愛を伝えたい。
救急車も呼んでもらえたことだし、AEDを持ってきて慣れている大人の人がたくさん協力してくれたおかげで、わたしは特に障害を残すこともなく、受験もすることができた。
「覚えてるか? ソフトクリームを食べた時のこと」
わたしが受験を終わらせた日のこと。
太一くんは、わたしの志望校の近くまで来てくれて、その後誰もいない道路まで一緒に行った。
「ソフトクリーム?」
ソフトクリームを食べた時、といえばあの時だろうか。
「みんなと一緒に学校帰りに食べて……」
「そうそう」
覚えていないはずがない。あれは、あの時、他の人から見たらちっぽけな出来事だと思うけれどわたしにとっては、太一くんと“間接キス”をした大切な出来事だったから。
わたしが一度だけ、こくんと頷くと太一くんは突然屈んで、キスをしてきた。
「……!!」
え、なんで?
なんで?
本当に、どうして!?
好きな人とキスをした。甘酸っぱくて、きゅんとして嬉しいはずなのに、わたしの頭の中には動揺が走った。
「間接キスしたんだ、今度こそはちゃんとしたキスしないとじゃん」
「え、え……!?」
太一くん、間接キスしたんだ、って言った。
あの時、わたしだけじゃなくて太一くんも間接キスとしていたの?
「今まで、ずっと言えなかったけど……。俺は、輝美のことが好きなんだ」
今までよくぼやけて見えなかったものが、急に鮮明に見えてきたようだった。
でも、視界は逆。
さっきまではっきりと見えていた太一くんの顔は、もうぼやっとしている。
「わたしも、太一くんが好き」
「ん、ありがとう」
涙が止まらないけれど、これはわたしが太一くんに対する愛の涙だって分かった。
太一くんはその後何も言わなかったし、わたしも何も言わなかった。
ただただ、彼はわたしの涙で濡れた顔を拭いてくれていた。