星の数より多く、君に愛を伝えたい。
わたしは、太一くんともう一度ベランダに出て星空を眺めた。
「太一くん」
「ん?」
ちょうど、星太と美歌がいないから返したい。あの時、言ってくれた言葉をそのままわたしが彼に返したい。
「わたし、この星の数より多く君に愛を伝えたいです」
「なんだよ、いきなり」
おかしそうに笑った太一くんを見て、わたしはふくれっ面をする。
日頃の想いを、愛を伝えたかっただけなのに。
「母さんがいきなりそんなこと言うなんて」
かあ、さん……?
「なんだよ、星太と美歌の母さんなんだから、『母さん』で間違いないじゃん」
聞きたくもない正論だ。
なんでよりによって、今、『輝美』って呼んでくれないんだろう。
太一くんは、わたしのことを『母さん』と呼ぶのは、星太と美歌もいる、家族で団欒する時だけじゃん。
「ひどいなあ、なんでそんなこと言うのよ。お父さん」
わたしが仕返しに、『太一くん』ではなく『お父さん』と呼ぶと、彼の顔はさっと顔を赤くなった。
「ぷっ!」
お互い、星太と美歌がいるところと同じ呼び名にしただけなのに、わたし達は堪えきれなくなって吹き出した。
「ごめんごめん。俺も、星の数より多く、君に愛を伝えたい、輝美」
わたし達は、空を見上げた。
紺色の空に、遠くで瞬いている星。
この向こうには、わたしを見守ってくれているお父さんとお母さんがいる。
太一くんを見守ってくれている、星歌ちゃんがいる。
向こうの世界にいる大切な人が、いつまでもずっと、わたし達を見守ってくれていますように。
星になった大切な人たちに見守られながら、わたし達はキスをした。
fin.