星の数より多く、君に愛を伝えたい。

そうだった。お母さんが言っていた言葉。


『悲しい時にお星さまを見たら、笑顔になれる』、か。


わたしは、カーテンを開いて窓も開けて出る。


ああ、今日はダメなんだ。


星は見えない。
夜空は雲で覆われていて、星も隠れている。



「うっ。ううっ……」



星が見えない。それだけの理由で両目から、ぶわっと涙が溢れて止まらなくなった。雲で覆われた空が滲んで見える。



「っあああああ!」



誰もいないベランダで、わたしはあの時の、幼稚園児に戻ったように声を上げて泣いた。


今日の悲しみを、星は引き取ってくれない。


よりによって、今日は。


小さい頃にタイムスリップしてくれないかしら。お母さんが生きていたら、抱きしめてくれるかしら。



「お母さん、お母さん……」



お母さんに会いたい。


こんな大人気ない願い。叶わない願い。


世の中には、どうして孤児というものが存在するのだろう。神さまは、どうしてお父さんとお母さんをこの世から追い出したのだろう。



「お父さん、お母さん……。会いたいよぉ」



この雲がわたしまで包んでくれたら、お父さんとお母さんに会えるのかな。




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