星の数より多く、君に愛を伝えたい。
部活も終わり、わたしは下駄箱で靴に履き替えた。
「すみません、望月先輩……ですよね?」
わたしの名前を言ったのは、ショートヘアの女の子だった。背は、わたしと同じくらい。
くりっとした目、さくらんぼみたいな唇は、綺麗に弧を描いて笑っている。
あっ、この子。
今日、廊下でわたしが近づいた時に逃げちゃった子だ。
「あっ、わたし? うん、望月 輝美です」
わたしの名前を知っているみたいだけど、この子は誰なんだろう。
「わたし、バレー部の1年の大原(おおはら) すみれっていいます!」
あっ、大原 すみれちゃんってこの子だったんだ。
「へ、へえー……。すみれちゃんのことなら、噂で聞いたことがあるよ。あなただったんだね」
「ハイ!」
にこにこっと、花が咲いたように微笑むすみれちゃん。
「えっと、どうしてわたしの名前を知っているの?」
「吾妻先輩が、こないだ先輩のこと、望月さんって呼んでいるのを見ちゃったんです」
吾妻先輩。
わたしと関わりを持っている、吾妻、という苗字の人は1人しかいない。
「吾妻 純平くんのこと?」
「そ、そうですっ! それであの……お聞きしたいことがあるんですけど」
「うん」
なんでわたしに聞くんだろう。クラスも部活も違うわたしは、吾妻くんについて聞かれてもきっとうまく答えられない。