結婚するには乗り越えなくてはいけない壁があるようです
「…ん。松島さん」
「え?あ!すみません!」
血液製剤を届けてくれた看護師さんに呼ばれてガバッと体を起こした。
その拍子になにかが落ちた。
「白衣。落ちたわよ」
「ありがとうございます」
と言ったものの、この白衣はいったい誰のものだろう。
看護師から血液製剤を受け取り、退出したのを見届けて白衣を広げてみた。
私のものよりも大きいサイズで、ボタンの位置が逆。
二の腕の部分には筆記体の英語でITOUと書かれていた。
検査結果はすべて報告済みだし、他のデータも電子カルテで確認できる。
わざわざ検査室にまでやって来た理由は何なのだろうか。
「まさか何かミスでも?!」
焦る気持ちを抑えながら、急患のデータを確認するも、特におかしなところはない。
「いったい、何の用だったんだろう」
気になって血液製剤を持って行ったついでに伊東先生を探した。
でも、伊東先生は医局で仮眠中だと聞き、仕方なく白衣を医局のドアノブに掛けて帰宅することにした。