結婚するには乗り越えなくてはいけない壁があるようです
「本日はお時間をいただき、ありがとうございます」
実家よりはるかに大きい、二世帯住宅に気後れしながらも、座敷で向かいに座るご両親に自己紹介する。
「尚さんと同じ職場で働かせていただいています、松島杏(まつしまあん)です。よろしくお願い致します」
「あ、はい。よろしく」
歯切れの悪いお義父さんの返事と、そわそわ落ち着かない様子のご両親。
明らかに混乱している様は彼に続いて玄関に入った時にすでに気付いた。
でも、なにが原因なのか、そこは初対面なのだから分かるはずがない。
黙って様子を伺っているとお義父さんが私に質問を投げかけてきた。
「松島さん、でしたっけ?歳は?」
彼は私に関して、事前になにも話していてくれていなかったのだろうか。
「社会人三年目の25歳です」
「25……それはまた若いな。な、母さん」
恰幅の良い彼のお義父さんはそれ以上に言うことがないのか、お義母さんに話を振った。
対して痩せ気味のお義母さんは「ふぅ」と小さくため息を吐いてから息子に訊ねた。
「彼女で間違いないのね?」
「はい」
彼は即答したけど、誰か他のひとの存在を匂わせた言葉にはふに落ちないのか首を傾げている。
私も不安が胸に渦巻くばかりで、視線の先が落ち着かない。
キョロキョロしていると、お義母さんと目が合った。
鋭い眼光に体がすくみ上がる。
それでもなんとか堪えて視線を外さずにいると、お義母さんが口を開いた。
「告白はどちらから?」
唐突な質問内容に、緊張も相まって言葉に詰まってしまった。
見兼ねた彼が質問された私に代わって答えた。
「俺からだよ」