志鎌くんは笑わない。

約束。

＊


まだ少し肌寒い、春の訪れをゆっくりと感じる季節。


畳の匂いが染み付いた古い家に似合わないお気に入りのくまのぬいぐるみと共に、私はここへとやってきた。


誰も知る人がいない、孤独なこの居場所へ。


馴染みのものは一切なくて、幼いながらも窓の外に広がるこの景色は殺風景に感じた。


特に家でする事もなく、辺りを探検しに行った私はそこで殺風景なこの景色を色付けるそんな不思議なオーラを放つ年の近い男の子に出会った。


あなたは初めて会った私に恐ることもなく、ただはっきりと告げた。


幼い私はその内容に頭が追いついてくるわけはないけれど、でも雰囲気で何となく理解した。


きっと楽しいはず、それだけで私は簡単に首を縦に振った。



「じゃあ約束ね」



そう言いながら私は男の子の手を取って、小指と小指を絡めた。


少しだけ男の子は驚いた顔をしたけれど、すぐさま私の瞳を真剣に見つめた。



「どんな時も私の隣にいてね」




殺風景なこの景色がきっと彩るはずだから、そう願いを込めて私は小指に力を込めた。


何も言わずに男の子は一つ、はっきりと頷いた。


ーーこれが、私達の交わした大切な約束だった。