志鎌くんは笑わない。



そんな私の声は届くわけもなくて、笑い声達がかき消していく。


ギィと悲鳴を上げたブランコに力を込めて立ち上がると、一つ足音がした。


振り返る前にその足音は私の元へと近づいて、その気配に何となく察した。



「おかえり、ふみくん」


「ただいま」



変な挨拶を交わして、笑顔を向けるとふみくんは優しく瞬きをした。


何も言わずとも私達は公園を後にして、河川敷へと向かう。


最初ここに来た時は何もない、殺風景な場所だと思った。


それなのにあの時の出会いが、今の私が見つめる世界に色を灯した。


ふみくんと出会わなかったとしたら、今頃私の世界はどうなっていたのだろうか。


想像もつかない真っ暗な世界だったのか、それとも何も見ることもなかったのか。


どちらにせよ今の私にはキラキラした世界が目の前に広がっている、それだけの事だ。


隣で歩くふみくんの影と私の影は寄り添って歩いていて、羨ましい影の世界で二人は笑っている。




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