Sync.〜会社の同期に愛されすぎています〜
瀬戸口は、ふっと笑って私にいつもの『砂糖なし・ミルク多め』のコーヒーを差し出した。
いつもの味に、これが夢ではないことを再確認する。
机の上には、先程いい香りをさせていたトーストとサラダとウインナーと目玉焼きがワンプレートにのせられていた。
「うわーおしゃれ。美味しそう」
とうっとりしてしまったがそれどころではない。
瀬戸口はメガネをかけず、いつものボサボサ髪の毛は、ところどころ寝癖があるもののいつもの酷さはなく、よくある男のおしゃれなカットだった。
白いTシャツにゆるっとしたスウェットパンツを履いている。Tシャツの上からもわかるような程よく筋肉のついた体は、普段着ているジャケットに隠されていて知らなかった。むしろもっとお腹が出ていると思っていたぐらいだ。
Tシャツにパンツのみが恥ずかしくなった私は、彼に同じようなスウェットパンツを借りて履き、同じ朝ごはんを食べている。まるで同棲中のカップルのようだ。
「メガネかけてよ。なんか知らない人みたいで落ち着かないから」
「えーー。実はカミングアウトするとあれ伊達眼鏡なんだよね。俺視力悪くないし、なんか独特の感性を持っている男に見えるからかけてるだけ。あとは、女に言い寄られるのが面倒だから」
さらっと言いながらコーヒーを口に含む。彼はコーヒーはブラックと決まっている。メガネをいつも曇らせて飲んでいるのが少しだけ面白くてみていたのだが今日はメガネをかけていないので、コーヒーを快適そうに飲んでいる。
メガネが彼の整った顔立ちをかき消していたことに今更気が付かされた。
というよりも、今まで瀬戸口はメガネをしていることが当たり前だったが、実は似合っていなかったんじゃないかという考えも浮かぶ。そしてさらっと自分がモテる発言もしている。確かに、こんな人がデザイナーだったら夫婦で家を建てにくる場合、奥さんはメロメロで夫婦関係に亀裂が入るかもしれない。
あのゆるい雰囲気のメガネ青年というところも売りだったし。
(こいつ、何者?)