Sync.〜会社の同期に愛されすぎています〜
こんな風に会話をしていればいつもの勤務中と変わらない。
でも、ふと顔を見れば別人のようだ。よく少女漫画にあるようなメガネ外したら美人だったの逆バージョンを目の当たりにしているような気分だった。
「とりあえず、昨日の状況を説明して」
私は、完全に自分が悪いのにも関わらず喧嘩腰で問いかけた。
あのあと、居酒屋に入った私は「酔って忘れたい」といったため瀬戸口が知っている限りの強いお酒をかたっぱしから飲んだという。何があったかは頑なに話さなかったらしい。それから私はその居酒屋で寝初めておんぶをしてこの家までたどり着き、酔っている中行為に至ったという。
私は、完全に否定する。でも、服は脱いでいて下着の上にTシャツを着なおしているところを思い出しまた不安になる。
「いや・・・でも、血出てないし」
私の動揺しながらの独り言に対して、「血?」と瀬戸口は問いかける。
「え・・・私ちゃんとできたの?・・・」
「どういうこと?」と目を丸くした瀬戸口。
彼とはこの会社に入社してからかれこれ6年以上の中になる。
プライベートな相談は一切したことなどなかった。でも、仕事の相談に関しては数え切れないほどしてきたわけで、私がどんなに愚痴を言おうが、反論するわけでもなく黙って聞いてくれていたし、とても口の硬い男だった。
どんなことを私が言おうが、杉原さんのような反応はしないはず。
「だから・・・・私・・・・その・・・初めてだったの」
その言葉に瀬戸口は真っ青になっていった。
「まじか・・・ごめん。軽率だった。冗談だから・・・・安心して本当に何もしてない。
Tシャツは自分で着替えてた。着替えるときは俺外に出てたし、昨日の夜は俺はそこのソファで寝てたし。」
瀬戸口が、慌てふためきながら両手を合わせながら真面目な顔をして謝った。
私は、思わず間抜けな声が出る。冗談にもほどがある。
「28で処女って引くでしょ。私の見た目こんなんだし。経験豊富な女に見えるんだって大学の時によく言われた。ちょっといい感じになった人に初めてだっていったら「嘘つくな」って言われて嫌われた。笑えるでしょ。」
むしろ笑い話にしてもらった方が気が楽だ。この話はもう自虐ネタ確定。
「その男バカだな。」
そういって瀬戸口は私を抱き寄せて、優しくキスをした。
私は驚き思わず反射的に突き放した。
こんな男を私は知らない。あんなボサボサ頭でメガネでちょっとダサかった瀬戸口がどうして?
「え、キスも初めてだった?」
「そんなわけないじゃん・・・」
瀬戸口は私がいることを御構い無しに服を着替え始めた。鍛え抜かれた体にはしっかり筋肉が付いており私が思わず見とれていると、瀬戸口は「エッチ」とからかいながら言う。
鏡の前に立ち、髪を軽く濡らしてドライヤーで無造作にぐしゃぐしゃにしてスプレーで固めて、いつものダサいメガネをかけるといつもの姿に戻った。
「あ、俺まだしばらくはこのキャラで行こうと思っているから黙っておいて」
とニヤッと笑い私の頭を優しく撫でた。