Sync.〜会社の同期に愛されすぎています〜

卒業(瀬戸口泰生)


その日は、俺たちがシフトの休みが重なった前夜にすることにした。
なぜかと言うと俺が待ちきれなかったし、翠がいつまでも渋っているから。
いいホテルや旅館を予約するのもアリだったけれど知らない場所で余計な緊張をさせてしまうのはよくないと思ったのだ。
ロマンチックさなら元彼の方が一枚上手だ。なんだよ星を見た帰りとか・・・・
俺は現実的な方を攻めさせていただく。避妊もバッチリに。

当日仕事が終わり、珍しくお互いに残業をせずに会社を後にした。翠もこの後のことで頭がいっぱいで残業どころではなかったんだと思う。先ほどから顔を真っ赤にしてうつむきながら歩いている。

(どんだけ緊張してんだよ。可愛いなおいっ)

お互いに食べたいものとお酒を買い俺の部屋の前に着くと翠は後ずさりした。

「大丈夫、入ってすぐそういうことするわけじゃないから・・・それに翠がいいって言うまでなんもしないから。
とりあえず一緒にご飯食べよう。」

翠のふわふわとした髪を撫でると、少しだけ翠の緊張が収まったようだ。
いつも通りの会話をして、少しアルコールを入れた。俺だって緊張してないわけじゃない。
初めてこの部屋に入れた時だって、襲ってやろうかと思ったし、会社でおイタをしてしまった時も本当は心臓がばくばくだった。こんなに好きだった子と同じ空間に居られると言うこと。
貴重な高校生時代から今に至るまで、アイドルや女優に一切目もくれずに翠だけのことを考えていた。
俺にとっては、好きなアイドルや女優を一日好きにできる権利ぐらいにウキウキドキドキワクワクな展開なわけで今だに夢の中にいるみたいだ。

「お風呂先に入って来なよ」

「うん・・・」

部屋にも響くシャワーの音が俺の興奮を掻き立てていく。
(好きな子が俺んちの風呂入っているとかやばくない?)

俺は、そわそわしながらアルコールを口に含む。

しばらくして風呂から出た翠は、モコモコとしたタオル地のルームウェアを身にまとってい、濡れた髪を拭きながら現れた。
上はパーカーになっていて、上までファスナーを上げているけれど鎖骨と白い肌が見え隠れする。
下はショートパンツで細くてすらっとしつつも筋肉のないモチモチとした足が伸びている。

(あ~~早く触りて~~)

「ドライヤー貸して」

思わず見とれていた俺は、返事がワンテンポ遅れてしまい翠は不思議そうな目で俺を見た。
こんなに落ち着かないのは初めてだ。自分が自分ではないみたいだ。


その後、お風呂に入った後リビングへ向かうとまたしても緊張した面持ちの翠が居心地悪そうに座っていた。

「じゃあ、寝ようか・・・・」
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