Sync.〜会社の同期に愛されすぎています〜
「今日もカリカリしてるね~~~~」
そう言いながら、コーヒーを優しく机に置く。
コーヒーは砂糖抜きでミルク多目が好きな私の好みをわかっているのが同期の瀬戸口泰生(せとぐちたいせい)。
同期と言っても部署が違い一級建築士の資格をもち住宅のデザイナーのため同じ社内にいながらも違う部署のため用事があるときだけやってくる。
彼は、メガネをかけている。そのメガネは個性的な丸メガネをしていて彼のトレードマークのようになっていた。
お客様や、外部の方は名前を思い出せない時に「あのメガネの子」というほどで、面倒くさがりなのか忙しいのかでよく髪が伸びっぱなしになっている。今日も髪が目にかかっていて野暮ったい。仕事に追われると大抵髪がボサボサになる彼のことを私はいつも指摘する。
メガネの印象が強い彼は、普段はTシャツに動きやすそうな着古したジャケットに足首の見えるすらっとしたスキニーを合わせている。そんなオフィスカジュアルしか見たことがないし、プライベートではたまに飲みにいく程度であまり関わらない。
どんな生活を送っているとか、彼女がいるだとか、どんな学生だったかとかを一切知らない。
こんなに長く一緒に働いてきたが恋愛対象として上がったことが一度もなかった。
ただ、ビジネスパートナーとしては最高で仕事に関しての悩みをよく聞いてくれるし的確なアドバイスをくれる。
今日も少しだけ先程の出来事を話すことで気持ちがスッキリした。
「これ、この間まで担当してたお客様のアンケートなんだけど担当していていただいた今泉さんの対応が大変素晴らしく、カーテンと証明も大変満足でした。また友人が家を建てる際に、今泉さんにお願いしたいです。だって・・・よかったね。これまた表彰されるんじゃない。」
と優しい声でアンケートを読み上げた。
「嬉しいよね・・・こういうの何年この仕事していてもさ・・・」
私は仕事に取り掛かろうとすると
「最近、パソコン見てる時の今泉超怖い顔してる。誰も寄せ付けないオーラ。なんか老けてきてるし」
と優しさにホッとしたのもつかのま相変わらずの嫌味を言って去っていく。
「ひどい!!!」
私は、また大きくため息をついて仕事に取り掛かる。
このやり取りも入社してから変わらなかった。
私が、ここまで仕事をしてこれたのも彼のおかげがだったのかもしれない。