Sync.〜会社の同期に愛されすぎています〜
その日、私は蓮の元へ行き泣き腫らした目の理由を問う蓮を無視してそのまま腕の中で眠りについた。
理由を聞かれて答えないのは私の可愛げのないところ。
それでも、側にいてくれる蓮の優しさが安心する。
いつでも私を迎え入れてくれる彼の存在が私にとっては今なくてはならない家族のようなもの。
いつまでもこんな風に側に入られたらいいのに・・・


朝方彼が電話している声で目が覚めた。


【もう、いい加減にしろって・・・】

イライラしている様子で、蓮が電話の相手とやりとりをしているので私は寝たふりを続けた。

【俺だっていっぱいいっぱいなんだよ。】

しばらくして、ベッドに入り寝付けない様子の蓮だったがしばらくして寝息を立てているのを見守っていると今度は私が眠れなくなってしまった。喉を潤すために冷蔵庫へ向かう途中カバンの中に乱雑に置かれた通帳に思わず目が止まる。
例え、交際相手と言えど通帳を見るのはいかがなものだろうか。
しかし、ここへきて父の言っていた言葉が頭をよぎる。

恐る恐る覗いた通帳は、給料が入っても半分以上が蓮の両親の名前当てに送金されていた。
ふと今までの行動を振り返ると、過去にクレジットカードの話をした際に、学生の頃貧乏すぎて料金を滞納したことでクレジットカードの審査が通らないと言っていた。

最近はほとんどの食費を私が出していたし、夕飯の食材を買うついでに生活用品も一緒に買わされることが多かった。いわゆる紐状態。私自身、嫌味な話だが欲しいものは自分のお金を使わずとも帰るし、家賃光熱費もかからず給料のほとんどを貯金や、投資に回していたためこの異常事態にも気がついていなかった。

次の日、目が覚めると
「ごめん、今食べるものなくてさ・・・なんか買いに行かない?」


今までは、違和感のなかった会話なのにどうしてだろうか・・・疑ってしまう自分がいる。
それでいて、付き合った頃は私にものを強請るようなことはなかったのに、最近やたらとその瞬間がある気がする。


知らず知らずのうちに蓮に依存した私は、蓮のことを「ダメ」にしていた。

大嫌いな父親だけれど、言っていることはいつも正しい。
だから悔しい。


いつも通りに一緒に過ごして、なんでもなく一日が終わった。
狭い部屋で、一緒に食事を囲んでまるで夫婦ごっこみたいなことをしてきた。
蓮と一緒ならどんな場所でも、幸せに生きていけるとおもう。
私が知らない「温かさ」をたくさん教えてくれる。
きっと毎日、笑って暮らしていると思う。

でも、それは私に向いてないってさ。
親が決めたルートを、親が決めたように進まなくてはならないの。

結局ね、貧乏は怖い・・・
険しい道には行きたくない。

ごめんね。

その程度の覚悟であなたのことが好きでした。

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