Sync.〜会社の同期に愛されすぎています〜
たまたま、仕事が早く終わり出張を一日早く切り上げ帰宅した日だった。
ベッドの中に、妻と男が眠っている。
ベビーベッドにはもぞもぞして今にも起きそうな我が子がいる。
勢いで布団を剥ぎ取ると案の定二人は裸のまま抱きしめあって眠っていて、俺の気配に気がついた二人はまるでこの世の終わりとでもいうような顏をした。
我が子の前で行為に及んだという事実に吐き気が止まらない。
確かに出会った時からビッチだとは認識していたがここまでだったとは。
その後、リビングで静かに話し合いが行われた。相手の男も逃げることなく応じている。
「私は、悪いことをしただなんて思ってないから」
その一言目から始まったことに俺は思わず呆れて相手の男を怒鳴ることもできなかった。
けろっとしている心春の横で、申し訳なさそうな顔で座る不倫相手。
「いやいや、自分のしたことがわかってないだろう。」
「だって、あなたは私がいてほしいときいてくれなかったじゃない・・・」
涙ぐむ心春の背中を優しくさする不倫相手が腹立たしい。
「しょうがないだろう。仕事が立て込んでたんだから。」
「呆れた、夫でありながら異変に気がつかなかったんですか?死のうとしてたんですよ。」
(え・・・・?高層階のタワーマンションに、俺が家を開けることが多いから心春の負担が減るようにと家事代行を週一で頼んだし、生活費には一切困らようにむしろ贅沢すぎるくらいに金を稼いできたし何が何を持って死のうと思うわけ?)
とぼけた顔をした俺に、不倫相手は大きなため息をついた。
「男は仕事、女は家庭みたいな考え方なんですね。金稼いでいる方が偉いみたいな。
本当に心春がかわいそう・・・あの子が生まれてから心春は、実の母親も亡くなっていて頼れず、あんたの親もくそお節介で、友達もいないし、誰にも頼れず一人で子育てしてたんですよ・・・あなたは一体何をしたんですか?おむつとか替えたことあるんですか?」
不倫相手のフォローで心春は声を出しておいおいと泣き出した。
俺は返す言葉を必死に探すが、目を背けていたことを明るみにされて胸が痛い。
心春がこんな風になっているだなんて知らなかった。
「もう、私は無理・・・別れて下さい。」
そういって、記入済みの離婚届を机の上に出した。
常にお守りのように持っていたであろうその紙切れ一枚に思わずぞっとする。
「とりあえず、お互いに頭を冷やそう。俺が出て行く」
「なんで逃げんだよ。」
と不倫相手に肩を捕まえれた俺は、怒りを覚えて突き飛ばした。
「てめーが言える立場か?」
「もう、帰ってこなくていい」
心春は、俺を睨みつけた。
その目が今でも忘れられずにいる。
あの男は、心春の元交際相手であり義父に結婚を猛反対された元職場の同僚。
俺と見合いをする直前まで付き合っていたらしい。
(ん・・・?もしかして子供って・・・・)
俺はよからぬことを考えてしまう。
息子は本当に俺の子供なのだろうかーーー