Bloody wolf
嫌だと思っても朝は来る。

朝食を簡単に済ませて、学校へと向かう。


昨日のことを思い出しながら、千里には言わなきゃいけないなと思った。

第3者から聞くより、私が直接伝えた方がいいもんね。


ウルフの溜まり場で顔合わせした2人の先輩達との交流も増えるだろうし。

秋道が慌てて呼び出した2人はうちの二年生。


背が高くて八重歯のある金髪の戸田正樹(とだまさき)先輩と、ツーブロックの黒髪で見た目真面目そうなイケメンの中平結城(なかだいらゆうき)先輩。


先輩とか言われると照れると言うので、戸田君と中平君と呼ぶことになってる。

2人は私が幹部室にいたことに驚きはしたが、なぜか私の存在は知ってた。

学校で有名だからと笑われたが、ちょっと腑に落ちない。

私は学校では至って大人しく過ごしているつもりなんだけど。

一学年上の人達にその存在を知られてるとは驚きだ。




登校途中の生徒に混じって校門を潜れば、昨日の事件の噂が蔓延していた。

今時の情報網は凄いと感心する。


フードを被った謎の人物を詮索することで忙しい生徒達は、私の事になんて見向きもしない。

良かったと思う反面、フードを被った人物の正体が私だとバレた後が面倒なのが理解出来た。


まぁ、なるようにしかならないか。

遅かれ早かれこの学校の連中は知ることになるんだから。

それまでは顔出しを極力するつもりはないけど。

それならば、いっそのこと正体をバラしてびびらせておいた方が、ちょっかいもかけられないかな。

なし崩しにウルフに入ることになったとはいえ、その辺は覚悟はしておかないとね。


教室に入ると千里は既に登校していて、黒板の前でなにやらやっていた。

クラス委員は何かと大変だね。


「はよ、千里」

近付いていって声をかける。

「あ、おはよう、響」

振り向いた彼女は微笑んだ。


「あのさ、今日、ちょっと話あるからお昼は裏庭で食べよ」

さっさと言う機会を作らなきゃね。

狡い私が言い出せなくなる前に。


「えっ? うん。良いけど、何か深刻なこと?」

心配そうに聞かれた。


「ううん、そうじゃなくて。報告することがあるから」

そう報告。

彼女が反対したからって、私がウルフの一員じゃ無くなることはないから。


「分かった。お昼にね」

「よろしく」

千里に向かって軽く手を上げて、自分の机へと向かった。
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