Bloody wolf
休み時間毎に、及川君が来るので千里とはそんなに話もしなかった。

多分、お互いにお昼休みが気になっていたんだと思う。


及川君は相変わらず変わらない。

あからさまに好き好き光線を送ってくるので、どうしたものかと考える。

ウルフに入ったことで、及川君の世界とはますます遠くなったひ、スポーツ青年の彼とはどうにも合いそうにない。


光の世界の住人と闇の住人は、きっと相容れない。

学校で話すだけの友達としてなら・・・とは思わなくもないけど。


最近、及川君から妄信的な感じが伺えるので、何かいい手は無いものかと思ってる。

まぁ、私がウルフと繋がった事が知れれば、彼も呆れて諦めてくれるだろうか。

そうであって欲しいと願う。


「篠宮さん、体育祭の競技決めた?」

「まだ」

「運動神経良さそうだから、そう消極的にならなくていいのに」

爽やかに笑われても、面倒なものは面倒なのよね。


「・・・・・」

「一緒に男女混合リレーでない?」

「いや」

何が楽しくて、必死に走らないといけないのか。

疲れるだけだ。


「そう言うと思ってたけど。篠宮さんはぶれないなぁ」

「そ」

及川君も相変わらずテンション高いよね。

机に頬杖をついたままチラリと彼を見上げると、満面の笑みでこちらを見てた。


その瞳、やっぱり苦手だ。

淀みの無い真っ直ぐな視線はどこか居心地悪いから。

それに、最近は好き好き光線が加わってるもんね。


初めは物珍しそうに見てたクラスメートも、今じゃ日課となってるこの光景に慣れてしまったのか、さほど関心を持ってない。

私を追いかけてる及川君が、当たり前らしい。


それはそれで、どうなんだろうか。

及川君の必死さを見て、クラスメートは哀れみさえも持ってると、千里が前に言ってたような気がする。


残念なイケメンだよ、本当に。


「及川君は、サッカー部の出し物もあるのよね」

前に座る千里が聞く。


「うん。ちょっとしたデモストレーションをやるよ」

「リフティングとか?」

「そう。部員獲得の為に頑張るよ」

ガッツポーズをした及川君を見ながら思う。

サッカー部は人気があるから、すでに部員は沢山居るんじゃ無いだろうかと。


「運動系の部活は、体育祭での発表に力入れてるものね」

「そうなんだよね」

千里と及川君の会話を聞きながら、ぼんやりと遠くへと視線を向けた。
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