Bloody wolf
グウゥ・・・聞こえた音に、ハッと顔を上げる。
「なっ、何よ。仕方ないじゃないお腹減ってるのよ」
顔を赤くして俺を睨み付ける女。
そう言えば、俺が貰ったやつってこいつの晩飯だったよな。
貰った袋をガサゴソと探ると、そこにはおにぎりが三つとパンが一つ。
俺は一つだけおにぎりを取り出すと、袋を女に付きだした。
「これだけ貰う」
持ったおにぎりを軽く振って見せる。
「そう」
あっさりと言うと女は袋を受け取ってその中からパンを取り出して、袋を開けると躊躇なくかじりついた。
本当、マジでこいつ面白れぇ。
俺は女を横目におにぎりを口に運ぶ。
うめぇ、空腹にはたまんねぇな。
「今日は助かった」
そう言えば礼をまだ言ってなかった気がした。
「別に」
仕方なくだし、とチラッと俺を見る。
「それでも俺は助かった。最初の10人までは倒したが、あいつら後から後から沸いてきやがって鬱陶しかったし」
「そう」
「腹が減って力がでねぇし、一先ず逃げたらあの公園だった」
「へぇ」
「本当、俺に興味ねぇのな?」
「うん。知らない人だしね」
「あ・・・まぁ、そうだよな」
目の前の女と話すのが面白い。
チャラララ・・・着信音が響く。
「あ、私だ。ごめん、出るね」
俺を見てから、スマホを取り出してタップする女。
「もしもし、あ、お祖父ちゃん。うん・・・そう。あ、明日ね」
通話を始めた女を見ながら、俺もスマホを取り出してメールアプリを作動させた。
そろそろ、迎えを呼ばなきゃ。
マンション名は来たときに看板を確認したから、それを打ち込んだ。
うちの参謀ならそれだけで、この場所を特定して迎えに来てくれるだろう。
「じゃあ、明日ね」
女は通話を終えると、再びパンを食い始める。
「迎えを呼んだから10分ほどで到着する」
「それは良かったね」
当たり障りなく返答を返す女に、興味が沸いてくる。
「俺は晴成、お前は?」
「・・・響」
面倒くさそうに顔を歪めて教えてくれた。
「響な、覚えとく」
「いいよ、忘れて。もう会わないし」
会わないと言い切る響に、なんだか言い様のないモヤモヤが沸いた。
この時の俺は、それが何なのかを知らなかった。
ーendー