Bloody wolf
『忙しいので暫く会えそうにないんじゃ、寂しいのぉ』
お祖父ちゃんはそう言って名残惜しそうに帰っていった。
私は来た時と同じように雷牙君にマンションまで送り届けてもらった。
マンションの植え込みに彼の姿はもう無くて、さすがに数時間も同じ場所にいたらストーカーだよね、なんて思った。
自室のリビングでレポートを纏める。
中間テストの範囲を山を張って、書き留めていく。
来週はテスト期間に入るから、バイトは休みにしてるけど。
別に休みなんて要らないなと、思わなくもない。
社長の優しい心遣いに休む事にはしたけれど。
余った時間をもて余してしまう事は予感できていた。
ピピピ・・・テーブルの隅を置いてあるスマホがメールアプリの着信を告げる。
シャープペンシルを置いて、スマホを持った。
指先でタップして確認すると相手はお祖父ちゃん。
〈今日はたのしかって。勉強がんばるんだぞ〉
ちょっと変換が怪しいけど、意味は通じた。
お祖父ちゃんが必死な顔で画面をタップして打ってる姿が想像できて微笑ましく思えた。
中学生の頃、私にスマホをプレゼントしてくれた時に、お祖父ちゃんもスマホに変えたらしい。
未だに妙な変換をしてくるお祖父ちゃんだけど、私と連絡を取りたいと頑張ってくれてるのが伝わってくる。
〈了解、お祖父ちゃんも無理しないでね。今日はご馳走さま〉
絵文字も付けずに返す。
直ぐに返信は帰ってきた。
涙マークとハートマークが沢山のそれに、恋人じゃないからと笑った。
何度か簡単なやり取りをして、メールアプリを終わらせる。
壁にかけてある時計は、もう夜中の12時を指していて、スマホを机に置いて背伸びした。
「う~んっ、もう眠いから寝よう」
教科書とノートを閉じて立ち上がる。
部屋の照明を豆電球に切り替えて、布団の敷いてあるロフトへと向かった。