Bloody wolf
「あ~それは言えてるね。怖いよね、よく知りもしない男が帰宅を待ち構えてたら」
光希、笑顔で追い打ちかけんな。
仕方ねぇだろ、あの時は何にも考えずに会いに行っちまったんだ。
「最近、ストーカー怖いからな」
豪まで、止めてくれ。
グサグサ刺さる言葉に、胸を押さえた俺を、秋道が悪戯に目を細めて見ていた。
こいつだけが、知ってるんだよな。
響の所に行ったことあるって。
内緒だぞ! の意味を込めて睨み付けたら、仕方ないなと言う風に頷かれた。
秋道こえぇ~。
「響さんと言うのは、前に夜叉の闇討ちにあって血濡れて帰ってきた晴成を保護してくれた恩人です。なので、それを頭に入れて対応してくださいね」
秋道は、そう言うとメンバーを見渡した。
「あ~あの日な」
合点がいったとばかりに、ポンと掌を拳で叩いた瑠偉。
「白いジャンバー真っ赤になってた時だね。あんな恐ろしい風貌の晴を助けてくれたなんて、いい子じゃん」
キラキラした目で俺を見てくる光希。
「ああ、だから夜叉の排除を急いだんだな。夜叉がウロチョロしてたらその子に接触できないもんな」
豪、お前、勘が良すぎだろ。
「・・・・・」
「晴って、わかりやすっ」
「うっせぇ、瑠偉」
バツが悪そうに目を伏せると、笑いが起きた。
居心地の悪さに苛立ちつつも、今の空気が嫌いじゃねぇと思った。
みんなが協力してくれ事になってからも、捜査は難航した。
下の名前だけじゃ、中々響は見つからなくて。
たまに、みんなに内緒で響のマンションを見に行ったりしたけど、出会うこともなかった。
「ああ、西南高校はテスト期間中なんですね」
助手席に乗る秋道が、校門からぞろぞろと出てくる生徒たちを見ながら言う。
進学校の西南高校は、進学校の割りに校則が緩いことで有名だ。
うちのクラブに出入りしてる奴等も結構居る。
後部座席から、ぼんやりと通行中の生徒を眺める。
響が居たら良いのにな? なんて思った瞬間。
見覚えのある横顔が目に入った。
「停めろ! あの2人の女の横だ」
咄嗟に叫んだ俺に反応した五郎丸は、急ブレーキを踏んでハンドルを操作した。
路肩に避けた響達すれすれに停車した車にひやりとする。
「おい、あぶねぇ」
叫んだ俺が悪いけど、理不尽に五郎丸の頭を叩いてやった。
そして、車を睨み付ける響の顔を見据えて、俺はニヤリと口角を上げた。
み~ぃつけた!
多分、俺の瞳は捕食者のそれその物だったと思う。
隣に座る響に視線を向けながら、俺はこのチャンスを逃さねぇと心に決めた。
ーendー