Bloody wolf

「あれだけ目立ったら、もう無理だろ」

「人違いだったって言うわ」

晴成を睨み付ける。

目立ってるの分かってて声かけるとか、最悪だ。


「いや、無理だろ」

「最低、分かってて声かけたんだ」

「や、違う。悪気は無かったんだ。響を見かけて咄嗟に声かけた」

焦って言い訳する晴成は、ちょっと可愛かった。


「今回は不測の事態でした」

秋道は焦ってる晴成を一瞥して苦笑いした。


「そう。まぁ、人違いで通すから。私、友達少ないし、問題ないわ」

外野がなんと言おうと、知らぬ存ぜぬを通して見せる。


「う~ん、それは通らない気がしますね。ウルフの総長車に乗った事は広がっていると思いますし」

「総長車?」

なによ、それ。

首を傾げた私に晴成が、

「俺の乗ってる車ってこと」

と自分を指差した。


「・・・有り得ない」

私はとうとう頭を両手で抱えた。

本気で巻き込まれちゃってるじゃない。


「お、おい、大丈夫か?」

「大丈夫なわけないでしょ」

キッと睨んだら、タジダジした晴成が総長だと言うの。


「まぁまぁ、響さん落ち着いてください」

「・・・・・」

落ち着けるはずが全くないよね。

「響が危ない目に遇わないようにぜってぇ守る」

拳を握ってそんなことを言われても、信じられるわけもなく。



「守ってもらわなくても結構。火の粉が降りかかるなら自分で何とかするわよ」

だから、もう構わないで欲しい。

切実に願う。


「響、男前だな」

感心したように言う晴成に、

「煩い」

と一喝した。


「わ、悪りぃ」

しゅんとなった姿が捨て犬の様だと思った。


「私は静かに平和な生活したいの。これで最後にして」

悪目立ちもせずにね。

面倒ごとに巻き込まれるなんて真っ平ごめんだ。


「それは無理。俺は響に会いてぇし」

キリッとした顔で言われるとドキッとするけど、柔軟はされないよ。


「知らないわよ」

「知っとけよ」

「うっさい」

「煩くねぇし」

子供みたいな言い合いに、秋道は笑い出す。


「ククク、2人とも少し落ち着いて食事しませんか? 冷めると勿体ないですし」

それは一理あったので、素直に従う事にした。

食べ物に罪はないもんね。
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