Bloody wolf
警察の車がサイレンをけたたましく鳴らして通りすぎる。

ウルフを追いかけているのだろう事は予想できた。


追いかけっこの始まりね?

晴成、頑張って。


騒がしい騒音が響く街は、やたらと熱気付いている。

私がふっと足を止めたのは、幹線道路沿いの大きな立て看板の側。


ウルフを追い掛けていったせいか、人はまだらで周囲は落ち着いていた。


何処かでキャ〜と上がる黄色い悲鳴と、野太い声援。

楽しそうに聞こえたそれに、少しだけ笑みを浮かべた。


青春ってこう言うのかな?

私には良くわからないけど。


ぼんやりとしてると、爆音が周囲に轟き始めた。

うそっ、向こうに行ったんじゃないの?

焦った様に看板に身を寄せた。


バイクのエンジン音と、けたたましいクラクションが凄いスピードで迫ってくるのが分かる。

そちらの方へと視線を向けると、幾つもの眩しい光が群れをなし帯を引きながらこちらへとやってきた。

光の後ろには、パトカーの赤いランプが続いていた。


一代のバイクがその群れを飛び出し、赤信号の交差点へと突っ込んできた。


キキーッと響く通行中の車のブレーキ音。

交差点内をぐるぐるとバイクが周回しながら、全方向の車を停車させていく。


特攻・・・まさにそんな感じで突っ込んできたバイクの運転手。

怖くないのかな? なんて思った。


もう一台のバイク交差点中央に停まり、チーム旗を高く掲げた。

はためく黒い旗に描かれた赤毛の狼は気高さを見せつける。



一際大きくクラクションが鳴り響くと、車の流れを止めた交差点へ次々とバイクが侵入してくる。

猛スピードで駆け抜けていく様は、とても圧巻だった。


黒い特攻服を着た面々が楽しげにハンドルを操りながらも、隊列は崩さない。


大したものだなぁ、統制が取れてる。


お腹に響く重低音が嫌いじゃないと思う私は、こちら側の人間に向いてるのかも知れないと思えた。
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