Bloody wolf
ー晴成sideー



響と電話番号を交換できたのはラッキーだった。


教えてもらったのに、夜なっても連絡出来なかった俺は多分、ヘタれだな。

泣く子も黙るウルフの総長が聞いて呆れる。


響が絡むとどうしてもダメなんだよなぁ。

こんな俺を見て秋道は人間らしくなったと言うけど。

本当にいいのか・・・と考える。


さすがに今日は連絡する。

ぜってぇするって決めてたら、秋道の方が先に連絡してやがった。

それを聞いて慌ててメールした。


昨日の事で、学校は大丈夫だったか? と。

響からの返信は〈人違いで直ぐに解放されたと押し通したので問題ない。なんとかそれでやりとうす〉と言う簡単なもの。


普通の女なら絵文字なんかで可愛く飾って来るのに、響のメールは文字のみの簡素なもの。

本当、あいつらしいと笑えた。


あ~1日しか経ってねぇのに、もう会いてぇ。

マジで重症だな。

幹部室のソファーに座ったまま、仰向けに天井を見上げた。


「色々悶々としてるところ申し訳ないですが、そろそろ出発の時間です」

嫌みったらしいぞ、秋道のやつ。

「分かった、行くか」

立ち上がって背凭れに掛けてあった特攻服をひらりと羽織った。


「よっし、暴走だ」

「今日も飛ばす」

瑠偉と光希は既にテンション高めだ。

「2人とも最初から飛ばしすぎて、へたばるなよ」

苦笑いで豪は言う。


「問題ないって。今日も華麗に特攻をかましてやる」

「ハイハイ。怪我だけは気を付けろよ」

ヤル気満々の瑠偉を軽く諌めた豪は、ドアへ向かって歩き出した。


さぁ、行くか。

金曜の夜の暴走の開始だ。




車に乗り込んで、何十台ものバイクと暴走を開始した。

途中で出会った煩いおまわりが、俺たち後を追ってくる。

チームの連中が上手く進路妨害をしながら、スムーズに進む暴走。


幾つもの唸るバイクのエンジン音と、耳障りの悪い高いキーのサイレンが周囲に充満する。


気持ちが高ぶり高揚するのを押さえられねぇ。


多くのギャラリーが詰め寄る沿道。

俺達を見て騒ぎ立てる連中。


この時ばかりは、俺達が街の全てを支配したような気持ちになる。

大人から見れば馬鹿げた行為を、俺達は命を懸けて行う。

それが今生きていることの証明だとばかりに。
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