Bloody wolf
「こっちだ」

晴成は私の手を掴むと、部屋の奥へと進んでいく。

正面の壁に大きなチーム旗が掲げられていて、それは暴走の時に見たものと同じだった。


ここから晴成達の世界の中心。

彼らはこの場所に生きる意味を見つけてる。


長テーブルを囲むように配置されたソファーが4つ。

晴成は迷うことなくお誕生日席の位置にあるソファーへと私を連れていった。


「座れよ」

二人掛けのソファーに私を引っ張るようにして座らせた晴成は、そのまま自分も隣に座る。

なによ、このカップル席は。


「響さん、何か飲まれますか?」

「あ、はい。珈琲があったら」

「分かりました」

秋道は部屋の隅にある小さな冷蔵庫に向かった。


ゆっくりと部屋の中を見渡すと、テーブルを囲むように4つのソファーがあり、左の方には大型のテレビとその前にふかふかのラグが敷かれていた。

金髪と赤髪と青髪の3人が両サイドのソファーにすわって、こちらを興味ありげに見てる。


「響、ここならフードを取っても問題ねぇ。こいつらはお前の情報を漏らしたりしねぇ」

晴成にそう声をかけられて彼を見上げた。

「・・・分かった」

頑なにフードを被ってるもの失礼だしね。

フードに手をかけてゆっくりとはぐ。


「おぉ、可愛い子ちゃんじゃん」

金髪が口笛を吹く。

ああ、瑠偉とか言ってたっけ。


「・・・・・」

無言のまま視線を向けた。


ピクッと動きを止めた瑠偉が、ゆっくりと私から視線を逸らした。


「晴、紹介してよ」

ワクワクしたように晴成に言うのは赤髪。


「ああ。響、そこの赤い髪が光希」

「光希だよ、よろしく!」

手を上げた光希はニコニコ笑う。

私は軽く会釈した。


「そっちの図体のデカい青髪が豪」

「よろしく」

豪は短い挨拶をくれた。

それにも軽い会釈で返す。


「晴、俺は俺は」

自分を指差してアピールする瑠偉は、

「てめぇは、さっき自分で言ってただろうが」

と睨まれてた。

うん、確かにそうだよね。


期待の籠ったような視線が3人から向かってくるので仕方なく口を開く。

「響です」と。

「うわっ、響ちゃんてクールビューティーだな」

瑠偉がいちいち反応してくるので、ちょっとウザい。


「ククク、お前、顔に出過ぎ」

ウザいと思ったのが顔に出てた晴成が私を見て豪快に笑う。
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